動画は力技

 ブラザーさんがキャラCGと背景CGの合成についてMIXI日記に書いておられたので、ひさしぶりに技術メモなど。

 3DCGを用いた動画製作には、数多くの壁というか、難解な問題がありまして、その大きな一つが、ソフト間でのデータの互換性やコンバートに大きな難がある、というもの。どうやってもコンバートできなかったりするものがあるばかりでなく、同じファイル形式でやり取りしているはずなのに他ソフトに移すと平気でテクスチャが飛んだりする世界です。モデルのデータでそんな状態なわけですから、なおモーションの持ち出しはほとんど鬼門といっていい世界かも。

 全ての製作工程が一つの統合ソフトで完結するなら問題はないのですが、キャラクタアニメーションはあのソフト、背景CGはあのソフト、エフェクトは、なんて時にとっても困ってしまうわけで、力技が必要になってきます。そんな力技をいくつかメモメモ。


六角大王キャラとVUE背景を合成する

 キオ式PVによって一段と名を高めた六角大王。ニコ市場でも一時期売り切れたりしたみたいですね。キオさんが配布しているボーカロイド達のデータを用いてPVを製作している製作者も多いと思います。

 ですが、六角大王でキャラクタのアニメーションを製作しても、その作品はAVIや連番BMPなど以外には出力ができません。他のCGソフトにアニメーションデータとして読み込むことができない。VUEなどの背景ソフトと組み合わせるには、以下の手法で。

<その1 書割式>

 キオ式PVの製作者、Ussyさんもこれと同じ手法だと言っておられましたが、VUEのステージ上に透明平面オブジェクトをビルボード(常にカメラの方を向く)に設定して立てて、その表面テクスチャに六角大王で制作したキャラクタのアニメーション動画を読み込む。

 要するにVUEの背景ステージ上にうすっぺらいキャラクタの書き割り板を立てる、という手法です。カメラを引く、といった単純な視点移動なら粗が出ません。

 キャラクタは動画ではないですが、書割式でキャラクタと背景を合成した例はこちら↓(かなり古い実験作です)

 この時、キャラクタの背景を透過させる必要があります。まずキャラクタ動画を製作する際に背景を黒で制作し、VUEの書き割りに読み込みます。

 その上で、マスク画像として同じ動画を読み込みます。VUEはマスクで白部分を抜く設定になっていますので、それを反転設定すれば背景が簡単に透過となります。うまくいかない場合はマスク動画を連番BMPにして画像編集ソフトで調整してみてください。

 あと、最初にキャラクタ動画と背景動画の光源方向をなるべくあわせておくといいかも。この手法は、同じソフト上でレンダリングするだけあって、キャラクタが背景にうまく馴染みやすいという利点があります。

<その2 AfterEffectsでHDRI合成>

 これは逆に、背景の方を書割にする手法です。VUEで制作した背景データをHDRIとして出力し、それを六角大王で製作したキャラクタのアニメーションとAfterEffects上で合成、調整します。

 HDRIとは簡単にいえば(語弊はありますが)360度回転移動可能なパノラマ画像データのことで、これを扱えるソフトなら、その場でカメラの場所や角度を変えたりすることができます。

 六角大王がHDRIに対応していれば話は早いのですが、残念ながら対応していません。ので、AfterEffectsを用いるのですが、ただ、AfterEffectsもデフォルトではHDRIに対応していませんので、以下のプラグインを用いる必要があります。

 Trapcode Horizon
 http://www.flashbackj.com/trapcode/horizon/index.html

 キャラクタ動画のカメラ角度に合わせて、あとはHDRI背景をAfterEffectsのステージ上で調整していけば完成です。但し、HDRIは要するに実物のセットではなく背景の書割ですので、奥行き感に乏しく、キャラクタの存在感と合わない場合が多々出てきます。AfterEffectsでのエフェクト調整が必須かも。

<その3 カメラ情報を取得する>

 これは、キャラクタ動画と背景動画それぞれのカメラ情報を数値として把握し、キャラクタと背景の位置、視点に整合性をもたせるという手法です。カメラの単純直線移動などの場合には有効です。

 六角大王はPOV-RAYでデータを吐き出すことができます。POVはモデルのデータだけでなく、カメラ情報を持っていますので、これを用いる方法と、それもややこしければキャラ動画と背景動画それぞれの最初と最後のカメラ情報数値をメモして、それを互いに合わせてそれぞれにレンダリング、あと動画編集ソフト上で合成します。


 モデルにボーンを組みこむ技術があるヒトはモデルデータをMAYA、XSI、SHADEなどの統合ソフトに持ち込んでボーン入れた方が早いかなあ。