初音ミク聖誕祭

 かなり遅ればせながら、デビュー1周年ということで、あちこちで‘おめでとう’の声が飛び交った、ミク誕生祭でしたね。

 感謝の言葉を連ねるヒト、あらためてVOCALOIDの革新性を語るヒト、さらなる製作に意欲を燃やすヒト、さまざまな声にあふれたミク誕生祭でしたが、あらためてミクって凄いなあ。

 
 あらためて振り返ってみて、自分が最も凄いことだと思うこと、それは、ちょうど生誕祭に重なるかたちで実現したことですが、Kzさん達のLivetuneオリコンの上位を飾ったこと。売れたこと、ではなくて、ミクの歌声が、人間の歌手達による歌にならんで当たり前に売れるという事実が、目の前にあるということ。

 すでに当のKzさんやRYOさんほか多くのボカロPさん達が同人市場で実現していたことを、再度、商業市場で実現した形になるわけですけど、あっさりと人間の歌手による歌にならべて、聞ける、音楽として愉しめる、その楽曲に感動したり涙を流したり歓喜したりする、そうした状況が当たり前のように実現してあるということが、なによりも凄いなあ。

 これは、人間による歌声とVOCALOIDによる歌声、そのどちらが上か、どちらが表現力が高いのか、といった比較の話ではなくて、ボカロは当たり前に人間のこころを揺さぶるものにまで成長したのだ、そんな世界が目の前にやってきたのだ、ということ。

 ハジメテノオト、あなたの歌姫、私の時間、みっくみく。。思い出深い楽曲はそれぞれだと思うのですけれど、振り返ってみて、自分が最初に感動したのが、Kzさんの「Packaged」でした。ただ上手に歌えるというだけでなく、まぎれもなく世界は変わるを予感させる、自分にとって分水嶺を越えるものだと思えたのが、この曲でありました。Livetuneの名の通り、Liveで声を調整し、また最初からこれはプロだとコメントされた作品でしたけどね。


 いつも思うことですけど、古きよきSFを見ているみたい。

 当たり前にPCを使い、こうしてたいした意識もせずにネット上の空間に場所を占め、3DCGを使って作品を製作したりする。考えてみれば驚くような世界にいま自分達は生きているわけですけど、こんな世界に生きるとは思ってもみなかったなあ。

 自分が子どもの頃、科学的未来といえば、核兵器に象徴される黙示録的未来、文明と産業による人間の疎外、とりかえしのつかない自然環境の汚染と破壊、だったわけで、簡単に言えば大友克洋さんのアキラか原哲夫さんの北斗の拳、な未来だったわけでありますよ。科学技術はもはや人間に幸福をもたらさないのではないか、そんなことが言われた時代に自分は育ったのでありまして。

 その頃に見ていた未来とは、まるで違う世界に生きている。電子の歌姫として、ひとつの技術が、人間の心と幸福なかたちで出会う。いやほんと古きよきSFみたい。