原爆とパンチラ
http://www.j-cast.com/2008/08/26025739.html
不謹慎だろ、いや、んなこたねえだろ、といつまでも大きな騒動になってますが、どこへ向かうのだろう、これ。昔々、原爆オナニーズなるパンクバンドもありましたけど、しかし、原爆とパンチラって組み合わせもなかなか強烈だなあ。しかし、47さんでこういう騒動になるとは。いやはや。ニコ動の「踊ってみた」にしばらく大きな影響をもたらしそうですね。
ところで、不謹慎だとか、そうでないだとか、そういう話がここでしたいわけではなく。
この騒動を見ていて改めて思ったのは、ネットにおけるCGMや個人の趣味創作表現なるものが拠って立っている基盤の、そのあまりの危うさや脆さというもの。
これ、商業的な興業なら、マネージメントが「やめとけ」と間違いなく止めるものだと思うのですな。「そいつはあれこれと顰蹙を買うから、絶対やめとけ」と。興行師やマネージメントはそういう経験や知識の蓄積を持っているわけで、マンガや小説でも編集方が忠告したり線引きしたりする問題ですわな。
アイドルなら、ブログの書き方一つをとっても誰かが点検をしていたりするわけですけど、個人の趣味創作表現は、当たり前ですけどそうした知識や経験というものを蓄積したマネージメントの庇護を得られない。
また、こうしていったん騒動になった場合でも、守ってくれるものが何もない。マネージメントを介することで創作、表現者の個人的な生活が守られるところはあるわけで、いま、騒動は彼女達の個人情報の特定といった方向に動いていますけど、こうなったらもう一方的に逃げ回るしかないわけで。
踊ってみた、では阿部子さんが個人情報と顔写真を抜かれて引退する、といった経緯も既にあるんですけど、この二人には引き続き頑張って欲しいものです。
つくづく思うのは、既に下手なアイドルを凌ぐほどのヒット数や知名度を誇っていたというのに、いかに彼女達が危うく脆い場所に立っていたのかということ。
CGMやネットにおける創作表現は、一夜にして大スターを誕生させるものですけれど、興業周りの経験や知識を蓄積していない個人が早晩ボロを出すのは当たり前の話で、今回の騒動はやや馬鹿っぽい話にせよ、ボロを出しやすいのはある種必然的な問題なのだと思う。
ネットや表現における当たり前の常識や配慮であるを唱える向きもあると思うんですけど、巨大に膨れ上がるムーブメントの中にあって、個人に対応できない部分や読み違え、防衛できない部分が出てくるのは当然の話で、この騒動に限らず、何度も似たような騒動が繰り返されてはさまざまな人達が追い込まれていく。
しかし、毎度明らかになるのは、ネットにおけるCGMや個人の趣味創作表現なるものは、ただひとえに匿名性に依拠して成り立っている脆弱なものに過ぎないということですな。現に攻撃側は個人情報を割ることを最大の打撃と目している。いつものパターンでありますね。
日本のネットにおける匿名性について、やや非難的に言われることが多いですけど、実際、実名なら絶対に自分は萌え絵を描いたり動画を製作したりしていないだろうし、活動できないヒトは多いんじゃないかな。
匿名文化がCGMに果たした役割は大きわけで、日本がCGM大国となっているのも、2ちゃんやニコ動に代表される匿名的コミュニケーションの隆盛と切り離しては考えることができない。
ところで、この匿名的コミュニケーションは一方でいつでも個人の実在性を排撃する側面を持っているわけで、いったん騒動が起こったら、後はだいたい決まったパターンをたどりますな。それは個人の実在性が前に出過ぎている部分を叩く、に尽きる。もしくは、そうした部分そのものが騒動の引き金を引いたりもする。
たとえばブログやサイトで、親しい友人や恋人やの間でしか許されないような行動や発言を前に出し過ぎている場合。或いは、たとえば巨大な支持を個人の収益に結びつけようとしようとしている場合。
多くの人々がネットに表現や創作を通じて自己の実現を賭けているわけですけど、端的に言ってネットは実在を伴った現実的な意味での自己実現の場では実はないという。
今日も複雑怪奇で矛盾したネットの中で、自分たちは活動しているんだなあ。とつくづくネットにおける趣味創作表現のあり方みたいなものを考える、今回の騒動です。